今、自分たちにしか作れない酒を。
「誰にでもできること」に「誰も真似できない」ほどこだわり抜く、小さな蔵の酒造り

西のはずれの小さな酒蔵。良い原料を使うだけでは、大手には敵わない。
それならば、自分たちだからできることを、自分たちにしかできない手法で突き抜ける。

 

ここで蔵を畳むならもうひとあがき

鎖国中の江戸時代、日本で唯一貿易をおこなっていた長崎と、九州と本州をつなぐ要所・北九州とを結ぶ長崎街道の中間部に位置し、町名にもなっている基山 から流れる清らかな軟水に恵まれた自然豊かな佐賀県・基山町。明治2年から150年以上、この地で酒を醸し続けてきたのが基山商店だ。

 

 

しかし今から10年ほど前、蔵は深刻な経営難に見舞われた。当時の杜氏を筆頭に伝統を受け継いで作ってきた自慢の酒が、時代のニーズに合わなくなってきたからだ。目まぐるしい時代の変化に追いつけず、売り上げは減少の一途を辿った。

当時東京で行われた大規模な試飲・商談イベントに参加し、他蔵の酒を試飲した際、現専務兼杜氏、当時はいち蔵人であった小森賢一郎 氏は確信した。「このままでは確実に潰れてしまう」。基山商店の酒だけ突出して刺々しく、角が立つものであったのだ。

そして、基山商店はとうとう蔵を畳むか否かの岐路に立たされることとなる。立て直しの目途は立っていなかった。当然、ここで終止符を打つことも考えた。
しかし賢一郎氏の姉・綾子氏(現常務)の一言が空気を変えた。
「辞める前にもうひとあがきだけしたい。自分たちで酒を造ってみたい。もしそれでもだめなら、おしまいにしよう」(綾子氏)
これが蔵元杜氏・小森賢一郎誕生の瞬間である。

 

 

決意を固め息巻いたはいいものの、そう簡単に乗り越えられる苦難ではない。試行錯誤を5年あまり繰り返し、ようやく光明が差したかと思えば、今度は新型コロナウイルスの流行で再びのブレーキ。しかし賢一郎氏は諦めなかった。「ゆっくり今のトレンドを分析するいい機会」ととらえ、コロナ禍の3年間でのべ400以上の日本酒を飲み漁った。
こうした地道な努力と試行錯誤が少しずつ結実し、日本における今の「基山商店」の確立に繋がっている。

「自分たちの酒の一番の特徴は、基山の軟水を活かしたフレッシュさと柔らかさ。しかし大事なのは味だけではありません。酒造りの過程すべてで、非常に細やかな気配りを徹底していることを感じ取ってもらいたいのです」(賢一郎氏)。

 

みんなできるけどやりたがらない、小規模だからこそできるこだわり

酒造りの工程を一新し、細やかなこだわりを施す。それは決して最新鋭の機械の導入や、大規模な改築を指してはいない。小さな酒蔵・基山商店は、やろうと思えば誰でもできる、しかし皆手間を惜しんでやりたがらない「ちょっと面倒なひと手間」に着目した。

たとえば洗米。使うのはごく普通の小さな機械だが、一度に洗う量、浸水する時間、その日の気温といった数字を細かく管理し、記録に残す。そして条件と出来上がった酒を分析し、蓄積したデータを未来の酒造りに生かす。
また、賢一郎氏が酒造りに加わってから16年間、もろみを絞る圧搾ろ過機の外側まで清掃を徹底し、清潔さを保っている。さらに、そもそも雑菌やカビが発生しづらいよう、ろ過機を気温3~4℃の冷蔵庫の中に置くことにした。数ある日本の酒蔵のなかでも珍しい徹底ぶりだ。

 

 

このほかにも、発酵を行うタンクの冷却や貯蔵方法、瓶詰や火入れにいたるまで、賢一郎氏のこだわりと気配りは全工程の隅々まで、細やかに行き渡る。
ひとつひとつは小さなことかもしれない。どこの蔵でもやろうと思えばできることばかりだろう。しかし基山商店の強みは、この数えきれない「小さなこと」すべてを徹底していることだ。
大手を真似て良い原料を使い、標準化された手法で、機械を駆使して醸しても、小さな蔵の酒が大手のそれを超えることはない。それならば、小さな蔵にしかできない、自分たちだからできることを貫き通せばよい。「真面目にコツコツ」取り組む賢一郎氏の性格も手伝って、再び立ち上がった基山商店は殻を破り大きな進化を遂げた。

 

大好きな地元・基山町と一体化して地域振興を

自分たちの酒に自信が持てなくなり、一度は蔵を畳むことも考えた。そんな基山商店は今、試行錯誤の末に自分たちのスタイルを築き上げ、自信を持って自慢の酒を人々に勧められるまでになった。
しかし挑戦はここで終わらない。まだまだこだわりたい、改善したいことがあるという。
「ラベルデザインの特徴にもっと個性を持たせたい、地元佐賀県産の米を今よりもっと使用して、米農家に貢献したい、…挙げればキリがありません。そして何より、基山町の良さをもっと多くの人に知ってもらいたいですね」(賢一郎氏)。

 

 

佐賀県は日本のなかでも不便な地と思われがちだが、基山町は福岡県に程近く、九州の空の玄関口・福岡空港までわずか40分の距離だ。交通の便の良さの一方で、豊かな自然にも恵まれている。
自社の酒造りだけではなく、基山町のことを想い、町、農家、金融機関を巻き込み、地元と一体化しながら、基山商店はこれからもひた走る。

 

Kiyama Shoten - 合資会社基山商店

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