日本有数のリンゴ産地「津軽」の新たな挑戦
香り高く芳醇な味わいのアップルブランデー
本州最北端にある青森県。日本一のリンゴ生産地として名を馳せ、リンゴの生産量は全国の約6割を占めている。モホドリ蒸溜研究所が展開するアップルブランデー「LOVEVADOS BRANDY」は、青森県産の「ふじ」や「王林」等を100%使用し、同じく青森県にある世界遺産白神山地で採れた酵母、岩木山の麓の天然水で仕込んだ、青森づくしの逸品。青森県産のりんごならではの甘い香りを強く引き出すため、樽で熟成させないホワイトブランデーとして仕上げている。
商品はアップルブランデーのほかジュースもあり、アルコールが苦手な方でも楽しめる。ブランデー蒸溜所は、青森県はもとより、日本国内でも希少な存在。そのため地元青森県はもちろん、国内外からの注目も大きい。
「立佞武多」の郷、五所川原市に構える
ショップやドリンクカウンター併設の蒸溜研究所
モホドリ蒸溜研究所があるのは、青森県五所川原市。日本の本州最北部にある青森県の津軽半島中南部に位置している。青森県と言えば、「ラッセラー、ラッセラー」の掛け声、国の重要無形民族文化財に認定されている「青森ねぶた」が有名だが、高さ21メートルもある山車を曳き練り歩く、五所川原市の伝統民俗「立佞武多(たちねぷた)」も引けをとらず人気が高い。五所川原駅前には1年中立佞武多を保管している「立佞武多の館」があり、モホドリ蒸溜所はその目の前に所在。昔の風景がところどころに残る飾らない街並みの中、シンプルなカラーリングで統一された洗練された佇まいに目を奪われる。

津軽リンゴ特有の香り高さにこだわり
白神酵母と岩木山伏流水で仕込む
モホドリ蒸溜研究所は今から3年前、2021年10月にオープン。津軽地方にリンゴ農園を持つ、(有)サンアップル醸造が経営する。
開所のきっかけは、同社代表・木村慎一氏が30年以上前にヨーロッパを訪れた際、ブランデー作りが各家庭で当たり前のように行われていることにカルチャーショックを受けたことから始まった。地元のリンゴを使ったブランデーづくりを見て、「リンゴ産業を支える一手になるかもしれない」と強い想いを抱いて帰国し、形になるまで20年以上。釜の買い付けや設備準備、商品開発など、できることは社員一丸となって取り組んできたという。
現地まで行って買い付けたのは、ドイツのアーノルドホルスタイン社製造の蒸溜釜。1200リットルを蒸溜できる釜が二機搭載された連続式で、リンゴの香りを引き出しながら、アルコール濃度と共に酒質を高めていく。

モホドリ蒸溜研究所のアップルブランデーは、リンゴを収穫して破砕するところから始まる。世界遺産固有の酵母「白神酵母」で発酵させてから、いよいよ蒸溜がスタート。蒸溜には「前・中・後」の3段階あり、製品化できるのはえぐみやエタノールが抑えられた「中」の段階。段階の切替えは、人の舌で確かめながら判断している。
貯留は樽またはタンクで熟成させ、数種類をブレンドして味を決めていく。同社取締役の山口真未さんは、「開所して3年、まだ試行錯誤の段階。お客様が求める味と私たちが出したい味のバランスを日々研究している」と話す。

ブランデー作りで廃棄になるリンゴの搾りカスは、自社のリンゴ畑の肥料として再利用。一度使ったリンゴも有効な資源として余すとこなく活用し、エコなサイクルを実現。自社畑を持つ同社ならではの取り組みだ。
研究所では、ブランデーの製造だけでなく、一般客が工場や作業の様子を見学することも可能。併設されたショップ内のガラス窓から覗く蒸溜釜の迫力は圧巻だ。ショップでは商品を購入できるほか、ドリンクカウンターでは試飲やオリジナルカクテルの提供も。コーヒーや地元産のお菓子も用意されている。
国内外への周知でアップルブランデーの確立を
若手参入を促しリンゴ産業の未来を拓きたい
今後について山口さんは、「輸出量をもっと増やしていきたい」と話す。ブランデーの消費量は日本国内では決して高くはなく、一般の人々が日々たしなむ酒としては浸透していない。
「ブランデーを主流とするヨーロッパなどへの輸出量を増やし、まずは本場で認められることで、日本での認知度も高めていきたい」とした上で、「ブランデー作りでリンゴ農家を救いたい」と熱く語る。

「見た目も味も良いリンゴを作るのは、本当に手間暇がかかります。花が咲いたら、よく育ちそうなものを1つだけ見定めてほかを摘んでいく作業、実がなれば色をよく出すために1つ1つに袋をかける作業…。リンゴの木は背が低く枝が下に垂れているので、大きな機械が入るのも難しく、機械化もハードルが高いのです。
最近は高齢化でリンゴ畑を手放す人たちも増えてきました。加えて、昨今の異常気象で青森より北の北海道でもリンゴが育つ状況。このままでは青森のリンゴ産業がなくなってしまう、と強く危機を感じています。ブランデーに使うリンゴは形や色が悪くても問題ないので、生食用ほど手間暇がかかりません。それだけに加工用だと単価は低いですが、アップルブランデーのように大量に使う卸し先があれば、経営も安定するでしょう。そのような、若者が参入しやすい基盤を作り、リンゴ産業の未来を支えていきたいですね」。
リンゴ農家だからこそ、真っ先に、そして一番強く感じる危機感。モホドリ蒸溜研究所のアップルブランデーという新たな挑戦が、リンゴ産業の閉ざされかけた未来を拓いていく。

