また飲みたくなる優しい味わいの酒づくり
時代と向き合い、柔軟に変化し続ける歴史深き蔵

 

時代とともに柔軟に変化する。「こだわらないことにこだわる」。だからこそ、優しい味わいの酒、料理に合う酒、日常に溶け込む「また飲みたい酒」ができあがる。



古い時代をしのぶ旧跡と古い町並みが心打つ 名古屋市緑区

 

平地と緩やかな丘陵地で形成され、大高緑地をはじめとする公園や緑地が多く、恵まれた自然環境にある名古屋市緑区。桶狭間古戦場、大高城跡、俳人松尾芭蕉ゆかりの史跡など、古い時代をしのぶ旧跡が多い。
有松の東海道沿道では「重要伝統的建造物群保存地区」として国から選定された、古い町並みが広がる。家々の佇まいには刻まれてきた歴史の重みを感じずにはいられない。

名古屋市緑区大高町では、江戸時代から酒造業が栄えはじめる。当時はつくられた酒が樽船で江戸にも送られていた。現在では3件の酒蔵が徒歩5分圏内に密集するこの場所は、東海地方では飛騨高山以外に見ることのできない、大変貴重な地域である。

大高城跡から小路をたどって歩いていくと、風格のある戸口が見えてくる。なんとも歴史を物語る外観だ。神の井酒造は本家の酒蔵から暖簾分けする形で1856年に創業し、以来167年もの間、一心に日本酒をつくり続けてきた。

現在も使われている主屋は1856年創業当時から、蔵は1912年に建造。2012年には名古屋市の登録地域建造物資産に指定され、その文化的価値が認められている。

 

 

長い歴史を持つ神の井酒造だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。

第2次世界大戦中、日本国内では酒づくりが厳しく統制され、日本中の酒蔵に冬の時代が到来。神の井酒造も例外ではなかったが、名古屋市の中心街・納屋橋で出店を開き、なんとか経営を続けていた。
やがて戦争が激しくなり、国内の統制にも拍車がかかると出店は店じまいすることに。
その後なんとか戦争を乗り越えたものの、酒を売る場所・売る量が決められ、苦しい状況は続いた。それでも日本酒を作り続け、神の井酒造の長い歴史を守ったのだった。

日本が活気を取り戻してくると、世は酒の大量生産・大量消費時代へと突入していく。神の井酒造ではほぼすべての工程で機械を使って大量のパック酒をつくり、酒屋へ納めていた時期もある。その量は現在の酒造量の100倍にものぼるそうだ。

「平成のはじめごろまでは機械を使って酒を大量生産する日々でした。だけど今度は、パック酒を買うお客さんがだんだんと減りはじめ、これは『量より質』の時代が来るなと思いました。機械に頼る酒づくりを大きく変えなければ…と思ったんです」現代表・久野正彦氏はそう語る。
大量生産の酒づくりから大きく方向転換を決めた久野氏は「手作りの工程も取り入れて、とことん質にこだわる」と方針を定め、今の神の井酒造へとつながっている。

 

 

時代の変化にしっかり向き合い、柔軟な姿勢で酒づくりをしてきたからこそ、神の井酒造はその長い歴史を紡ぎ続けてきたのだ。

そんな神の井酒造のモットーは「こだわりすぎないこと」。
「個性を出すことにこだわりすぎると飽きるお酒になってしまうんです。過激な味や過激な香りは、飲んだときの派手さやインパクトが強いかわり、飽きてしまう。そうではなく、お客さんから『また飲みたい』と言ってもらえる、これからもずっと楽しんでもらえる『優しい味わいの酒』をつくりたい。優しい味は料理も引き立てますからね。だから個性の尖った酒づくりにこだわっていないんです」そう語る久野氏の表情は、一点の濁りもなかった。

 

大高町ならではの味わい 長年培った杜氏の手仕事

神の井酒造では井戸から酒蔵まで地下水をひき、日本酒づくりに使用している。井戸があるのは「徳川家康の兵糧入れ」で有名な大高城跡のふもとだ。

使用する酒米は、日本酒づくりに適した特性を持つ「山田錦」「五百万石」「美山錦」。愛知の酒造好適米である「夢銀箔」を使った地酒もつくっている。

 

 

さらには大高町の農家の方(久野氏の同級生)がつくった食用米「あいちのかおり」を使い、地元に根ざした純米酒の酒造にも力を入れている。
大高町ならではの日本酒が楽しめるのも、魅力の一つだ。

 

 

神の井酒造の酒づくりを支えているのは、杜氏・杉浦弘吉氏。31年間、日本酒づくりに力を注いできた。そんな杉浦氏が酒づくりで大切にしているのは「手作業にこだわること」。

 

 

「日本酒の味わいをつくるうえで重要な麹は、非常に繊細です。適切な環境以外では生まれることも生きていくこともできません。麹の状態を常に目で見て、手で触って、その時々によってふさわしい操作(温度・湿度管理など)を手作業で行ったほうが、質の高い日本酒ができるんです」(杉浦氏)。

 

機械が自動で温度を上げたり、乾燥をさせたりするよりも、長年培った経験で麹の微妙な変化を感じ取り、絶妙な調整ができる杜氏の手仕事に勝るものはない。

機械を使った大量生産の時代を経たからこそ、手作りの大切さや尊さを実感する。

 

蔵人もお客さんも、飲んでニタニタと笑える酒を

 

時代の変化に伴って進化をしてきた神の井酒造は、その柔軟性を「より美味い酒づくり」へと活かしている。最近では産業技術センターへもろみ(日本酒になる前段階の液体)を持ち込み、成分分析を実施。「仕込みの条件を少し変えたらどうなるだろうか」「何をどうすれば、どんな成分が増えて美味しくなるのか」と考えながら「美味い」を追求している。

 

 

「まずは自分たちが飲んで、『美味いなあ』とニタニタと笑える酒をつくるのが一番。そのうえでお客さんも自分たちと同じようにニタニタとしてくれるような酒が作れたら本望です」(久野氏)。

酒づくりの現場で日本酒と長年対峙し、舌の肥えた久野氏や杉浦氏が「ニタニタ」できる日本酒は何よりも美味い酒だろう。

 

Kaminoi Shuzo - 神の井酒造株式会社

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