地にこだわり、地酒を極める。

食の都・金沢の老舗蔵が挑戦するオーガニックな酒造り

日本でも希少な有機醸造蔵として、サステナブルな視点で酒造りに取り組む中村酒造。その背景には地元に対する深い愛と、日本の食文化を守り育てる強い意志があった。

 

豊かな自然と伝統の食文化が息づく古都金沢

創業文政年間の老舗企業の酒造りは、初代中村栄助 が酒造業を営む金沢の豪商・高桑家 から妻を迎え入れたのを機にスタートする。豊かな自然と歴史に育まれた金沢は、古くから多様な食文化を形成してきた都市。そのなかで中村家は日本人の主食である米の恵みに感謝し、醸造を通して地域の食文化を守り育てるという信念のもと、酒造りに邁進していった。

「酒は災いを避け、笑門来福、日々榮える」を意味する"日榮 "の名で親しまれてきた中村酒造。もともとは武家屋敷が立ち並ぶ城下町に蔵を構えていたが、2000年に瓶詰め工場のあった石川県野々市 市に移転した。現在の蔵が位置する手取川 扇状地は、霊峰白山を源とした伏流水が湧き出る全国有数の酒処。手取川の伏流水は口当たりが柔らかく、醸した酒は穏やかで繊細な味わいを生み出すとも言われている。

 

 


金沢産の有機米を使用した”AKIRA”を筆頭に、フレンチ界の巨匠アラン・デュカスとのコラボにより生まれた”アラン・デュカスセレクション”、幻の米と呼ばれる神子原米を原料とし、ローマ法王にも献上された”客人”、地元野々市市の廃酒造から採取した酵母で半世紀前の酒を復活させた”猩々 ”など、中村酒造は常にグローバルな視点で付加価値の高い日本酒を発信し続けてきた。その一方で地元の愛酒家の嗜好にも目を向け、なかでも金沢酵母にこだわった”金澤中村屋”は飲み飽きしない食中酒として広く飲み親しまれている。


食の安全・安心を守るオーガニックな酒造り

大学卒業後、大手広告代理店の営業としてキャリアを積んでいた8代目蔵元の中村太郎氏。1998年に先代より事業を継承した後は、蔵元として酒造りを統括するだけに留まらず、石川県酒造組合連合会会長を務めながら、石川の地酒と美食の祭典「SAKE-MARCHE」の開催などに力を注いだ。

「大量生産、大量販売による生産効率やコストを優先にする酒造りが主流になった今、あらためて”地酒”の価値を見直すべきだと考えました。地酒を造る蔵同士が手を取り合わないと、いつか日本酒の文化は廃れてしまう。それを防ぐためには石川の酒が持つ魅力を発信し、販売力を強化していくことが必要だったのです」(中村氏)


地域の将来を見据えた活動は中村家の伝統でもある。中村氏の先々代にあたる栄俊 氏は戦後、金沢経済界の発展に寄与するとともに茶道をこよなく愛し、文化振興にも貢献した人物。全国的にも珍しい茶道具の逸品を一堂に集めた”中村記念美術館”も開設した。自然に囲まれたこの美術館は多くの美術愛好家に親しまれ、古都金沢の隠れた観光スポットとなっている。このように幕末から現代にかけて金沢の歴史に深く関わってきた中村酒造。蔵の利益だけに執着せず、地域文化に貢献することは先代からの教えでもあったのだ。


そんな中村氏がここ数年にわたって取り組んできたのが、"地"にこだわった酒造りだ。

「地元で育まれた原料を、地元の気候と風土で醸すことで、はじめて蔵の特徴が出ると考えています。そのためにも米には人一倍こだわりたいですね」(中村氏)

その象徴となるのが、国内でもわずか10蔵ほどしかない欧米の有機認証を取得した醸造蔵である。有機米を栽培するのは、千年産業を目指した有機農業を実践する”金沢大地”。看板銘柄であるAKIRAは、このオーガニックファームの代表である井村滉 氏に敬意を表し、名付けられた。また、中村酒造では仕込みに使われる良質な水を守るため、化学薬品を一切使用しない散水濾床方式の廃水処理を行っている。有機への取り組みと同様に、環境に負荷を与えないサステナブルな酒造りは今後さらに加速していくことだろう。


和の心をもって醸せば、良い酒が生まれる

安心安全の酒造りは、酒蔵棟の設備を見ても推しはかることができる。蔵を移転した際には、高品質の生産体制を確立させるため最新設備を導入し、それに対応する瓶詰め機と加熱殺菌や急速冷却システムも新調。作業効率と衛生面のさらなる向上が保証された。


徹底した衛生管理を掲げるため蔵見学は不可となっているが、今回は特別に”製麹”の第一段階にあたる引き込みの作業を見せてもらうことになった。

「製麹とはいわゆる麹造りのこと。蒸した米を30~35℃程度に保たれた麹室に運んで広げ、麹菌を振りかけて繁殖させます。このとき麹室に雑菌が浸入するとせっかくの米麹が台無しになってしまうので、麹室には限られた人しか入ることができません」(中村氏)

この麹室はしばしば酒蔵の心臓部とも言われ、機械化を導入してもこの麹だけは手作業で行うという蔵元は多い。引き込みから出麹の工程まで麹が完成するのに約2日。製麹をはじめとする酒造りの仕事は、蔵人たちの息のあったコンビネーションが必要となる。日本酒の世界には「和の心は良酒を醸し、良酒は和の心を醸す」を意味する"和醸良酒"という言葉があるが、この中村酒造も例外ではなく"和醸良酒"の酒造りを大切にしてきた。


「地酒を極めるために地にこだわる。それが本来の日本酒が持つべき魅力だと考えています。地域の資源を磨き、魅力をつけて発信することが、私たち中村酒造の使命なのです」(中村氏)
 
創業から二百余年。かたくななまでに地元の米、水、そして人にこだわり、酒を醸してきた中村酒造。”地”を愛する心は、これから先も変わることはないだろう。



Nakamura Shuzo - 中村酒造株式会社

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