世界に轟け、地元魚津の名と魅力
“食ありき”の酒づくりを貫く純米蔵

たった7名の従業員が、どこよりも強い地元愛のもと酒を醸す。富山の“小さな巨人”ともいえる魚津酒造は、食材の宝庫・魚津の蔵ならではの考えで、食卓でこそ最も輝く酒づくりにこだわる。

 

港、霊峰、蜃気楼 大自然に愛された街 魚津

富山市中心部から北東へおよそ20km、魚津酒造は港にほど近い長閑な住宅街に佇む。敷地内には歴史を感じさせる棟々がどっしりと立ち並び、今はボイラーに取って代わられ、役目を終えた煙突が蔵のシンボルとして存在感を放つ。

富山県は中部地方の一つの県で、石川県、福井県とともに「北陸3県」と称される。北陸は日本のほぼ中央に位置し、日本海に面する。魚津市の地形は日本海側から内陸に伸びるように細長く、富山湾沿岸の平野部から3000m級の山岳地帯までの距離が近い。この独特な標高差が生み出す清らかな水や、豊かな海の幸、山の幸が魚津市民の誇りだ。

 

中でも日本を代表する港である魚津港は、恵まれた地理条件から日本海側の要所として江戸時代から栄えてきた。ホタルイカ、ブリ、紅ズワイガニ、白エビなど、富山湾を代表する魚介類のほとんどがこの魚津港から揚がる。

魚津港のある富山湾は、春先から初夏にかけて、年に数回蜃気楼が現れることでも知られる。大自然の気まぐれを一目拝もうと、シーズンになると全国から観光客が押し寄せる。
国内屈指の漁港、雄壮な山々、蜃気楼。魚津は大自然に愛された、食と神秘の街といえよう。

魚津酒造は市内唯一の酒蔵で、22年12月、日本酒キャピタル(東京)への事業継承をきっかけに本江(ほんごう)酒造から社名を変更した。酒蔵の維持のみならず、「魚津」の名前と魅力を国内外に轟かせたい。社長と従業員の強い思いを屋号に乗せた。

魚津酒造の酒造りを指揮するのは杜氏・坂本克己氏。これまで日本全国5つの酒蔵を渡り歩き、およそ20年をかけて酒造りのイロハを極めた。頭に巻いた白いタオルが印象的な坂本氏は、職人気質で頑固な杜氏のイメージとは裏腹に、気さくで弁舌さわやかだ。




設備を一新し純米蔵を宣言 大切なのは食とのシナジー

坂本氏が魚津酒造の杜氏に就いたのは22年の夏。まずは設備の総入れ替えから取り掛かった。特に、麹を寝かせ発酵させる麹室の設計図面は5回以上引き直し、試行錯誤を重ねてこだわりを詰め込んだ。温度計の位置ひとつを取っても、坂本氏は常識にとらわれない。「温度計は通例、天井に付けることが多いですが、知りたいのはできるだけ米に近い空間の温度。天井から吊り下げるように配置し、位置を細かく調整しました」(坂本氏)。

 

麹室は米から麹への発酵を行うための、非常に繊細で重要な場所だ。温度や湿度、目に見えない菌までが常時厳密に管理され、見学に訪れても当然立ち入ることはできない。「であれば、せめて中の様子だけでも見てもらえるように、設計の途中で無理を言って、窓をつけてもらいました」(同)。見学者への心遣いから、坂本氏の人柄がうかがえる。
魚津酒造は22年の事業継承のタイミングで「純米蔵」を宣言した。魚津酒造の酒はすべて醸造アルコールを使用せず、水と米、麹のみでつくられる純米酒だ。

 

「魚津は美味しい食材が豊富です。だからこそ、食材や料理の“名脇役”になれるような、飲みやすくて食事に合う純米酒づくりにこだわっています」(同)。主役はあくまで料理や食材であり、食事体験にさりげなく華を添えることのできる酒こそ至高。食が豊かな魚津の酒蔵ならではの考え方である。
坂本氏にとって魚津酒造は6軒目の酒蔵。昔を知る同志たちから、魚津に移って以降の坂本氏の酒は「柔らかくなった」「丸くなった」と評されるという。やり方は変えていないというが、魚津の水や米、食材、そして田中社長との出会いが、坂本氏の酒造りにさらなる刺激と進化をもたらしたのか。

 

蔵を代表する銘柄は“北洋 純米大吟醸 袋吊”。魂と真心を込めて醸した純米大吟醸を、袋吊と呼ばれる通常よりもさらに手間暇のかかる手法で丁寧に丁寧に搾った。味わいは濃厚で、甘味と酸味のバランスが程よく両立する。蔵の一押しはもちろん魚津の名産、ホタルイカの黒造りとの組み合わせ。一方で、フルーティな吟醸香はアンディーブとホタテのサラダやエスカルゴバターといった西洋料理とも相性が良さそうだ。23年にはリニューアルも計画中だという。


知ってほしいのは「魚津生まれ」の酒であること

魚津酒造の酒造り、その一番のこだわりとは何か。坂本氏によれば、原料選びや温度・湿度の管理といった技術面以上に、魚津の地でつくっていること、魚津の酒であることだという。
「手に取ってくれる人、仕入れてくれる店は選びません。ただ、“魚津の酒”であることを知ってほしいのです」(坂本氏)。食事との相性にこだわり抜いた日本酒を、食の宝庫・魚津の名とともに広く知らしめる。市内唯一の酒蔵として、看板を背負う魚津酒造の決意は強い。

「作り手に熱意がなければ、たくさんの人に手にとってもらうことはできません。田中社長をはじめ、作り手たちに好きだと思ってもらえて、その熱意が買い手にも伝わるようなお酒をつくっていきたいですね」(同)。魚津酒造の酒をひと口味わえば、蜃気楼の見える漁師町、魚津の大自然と作り手たちの地元愛に、思いを馳せずにはいられない。

 

Uozu Shuzo - 魚津酒造株式会社

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